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プロジェクトストーリー

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海外売上高比率が70%を超えるフジミでは、世界中のお客様のニーズに応え、高度産業社会の発展に貢献するために、さまざまなプロジェクトを展開しており、時には、自らの仕事の領域を超えた挑戦の機会もあります。世界最大手の半導体製造ファウンドリ、台湾積体電路製造(TSMC)社をはじめ、世界トップクラスの生産規模を誇る半導体メーカーを複数擁する台湾において、現地のお客様のニーズに、いち早く対応するために、2011年8月に台湾現地子会社FUJIMI TAIWAN LIMITED.(以下フジミ台湾)を設立しました。当時フジミ台湾設立プロジェクトに参画し、海外でゼロから研究開発組織を立ち上げた、研究開発職のIさんに、海外で新たな会社と組織を立ち上げる苦労と面白さを語って頂きます。

vol.01
台湾進出
プロジェクト
  • Y.I
    2003年入社
    CMP事業部 CMP開発課 係長

※取材当時

世界の半導体市場を牽引する
台湾のお客様のニーズに、
よりスムーズに対応するための
新会社設立

2000年代後半、当時、スマートフォンの爆発的普及により、半導体市場は新たな局面を迎えていました。半導体デバイスの高性能化に拍車がかかり、開発スピードがより重要な鍵を握ることになったからです。半導体製造工程で使用されるCMP用研磨材を開発するフジミでは、世界トップクラスの半導体生産規模を誇る台湾のお客様との関係を強化するために、2005年10月に台湾現地に営業所を開設していましたが、世界の半導体市場を牽引する台湾で、より早い情報収集と発信、何よりお客様のニーズに対して、よりスムーズに対応するために、現地で製品製造や研究開発ができる新会社設立のプロジェクトが立ち上がったのです。これが、私が携わった「フジミ台湾設立プロジェクト」です。

新会社を外国で設立するというのは、営業所を設けるのとは規模が全く異なることで、特にフジミ台湾では、日本の親会社と同様の「営業」「製造」「研究開発」「品質保証」のすべての機能を持つ新会社を設立することを目指すというとても規模の大きなプロジェクトでした。建物はもちろん、設備も、人も、ルールも一切整備されてない中で、ゼロから立ち上げるのは並大抵のことではありません。その中で、私の役割は「研究開発組織」の立ち上げを行うことでした。

2012年秋、研究開発組織の立ち上げメンバーとして、私を含め3名の開発者が日本から台湾へ向かいました。到着後、まず訪れたのは建設中の現地工場です。急ピッチで建造が進んでいるとはいえ、工場はまだ柱と骨組みしかない状態で「本当にゼロからのスタートなんだ」と実感したことが特に印象に残っています。半導体業界は開発スピードが早く、早く立ち上げたいという気持ちもあり、私たちは早速、実験室の設計や評価機器などの研究開発用設備の選定、また現地の研究開発スタッフの採用に着手していきました。

工場には、むき出しの柱
ヒト・モノ・システムをゼロから構築

私はフジミ台湾立ち上げプロジェクトの中でも、「研究開発組織」の立ち上げに注力しました。半導体デバイス向けCMPスラリー事業の今後に関わるという責任の大きさと、「組織の立ち上げ」という未知の仕事への不安より、研究開発以外の経験が自分自身の新たな成長につながるのでは、という期待感が上回りました。また、グローバルメーカーならではのスケールの大きなプロジェクトに参画できることの楽しみもありました。

2012年秋、私は開発組織の立ち上げメンバーである上司と同僚と3人で台湾に向かいました。到着後、さっそく現地工場を訪れましたが、そこで目にしたのはむき出しのままになっている柱でした。まだ工事が完了していない工場を目の当たりにして、「ゼロからのスタートなんだ」と実感したことを覚えています。

もっとも、台湾のお客様のニーズに1日も早くお応えするために、悠長に事を進めるわけにはいきません。私たち3人は密に連絡を取りながら、研究開発ラインの設計や研磨機、評価機などの機材を選定。人材面でも現地エンジニアを30〜40名ほど採用しました。

現地でエンジニアを採用したのは、お客様に最高の品質を提供するには、お客様との緊密な連携が不可欠というフジミの理念に基づいています。台湾のお客様が最もストレスを感じずにコミュニケーションできるのは中国語です。現地のエンジニアならば、中国語のちょっとしたニュアンスを読み取ることができ、試作品への意見や品質要求への正しい理解に基づいた対応が可能になります。

ビジネス慣習の異なる台湾で、
組織として力を発揮する基盤を構築

実験室など、研究開発に関わる環境整備では、研磨機や測定機等など1台あたり数億円の設備もありますが、自身の経験からどのような設備を入れるかも含めて慎重に検討していきました。日本での経験もあるので、大変ではあるものの何とかなるなという考えはありました。一方で、特に苦労をしたのは、ビジネス慣習の違いです。当時、私たちはフジミ台湾を、現地メンバーを中心とした会社にすることを計画しており、採用のみでなく、組織構築から人材教育までを行う必要がありましたが、台湾と日本のビジネス慣習の違いにはかなり苦戦をしました。台湾のビジネス社会は日本とは比較にならないほどの実力主義で、スタッフは皆、自分の仕事に高い誇りと自信を持っています。そのため、例え上司からの指示でも、理解や納得ができなければ、容易に受け入れません。私も指示を出す際は、納得感を引き出せるよう、「そのスタッフのさらなる成長を期待して依頼していること」、そして「この作業によってチームや個人にどのような良い効果が生まれるのか」など、細かい指示であっても意図や目的を明確にして、説明することを心がけました。そうしたことを繰り返す中で、私たちは、互いに信頼できる関係を築いていったのです。その結果、現地スタッフ個々人の成長はもちろん、開発部全体のチームワークも高まり、組織としての形が整っていきました。

台湾におけるお客様よりの信頼向上と、
フジミグループ全体の総合力向上

フジミ台湾の立ち上げにより、それ以前の、日本から台湾のお客様の対応をしていた頃と比較し、開発のスピードが一気に速くなりました。元々、技術力を高く評価されていたフジミに、開発スピードが加わったことで、台湾のお客様のフジミグループに対する信頼が飛躍的に高まり、世界最大手の半導体製造ファウンドリ、台湾積体電路製造(TSMC)社から、2013年にExcellent Performance Awardの表彰をいただくなど、よりいっそう高い評価をいただけるようになりました。

また、開発スピードの向上は新規ビジネス獲得の大きな武器にもなっています。試作品提案のスピードが早いほど、お客様の開発段階で仮採用を獲得しやすく、その先の正式採用に結びつくためです。また、フジミグループ内で、当時すでに研究開発機能のあった日本と米国と、台湾との3拠点でネットワークを構築し、研究開発情報の共有化をすることで、フジミグループ全体の新製品開発や、お客様対応などの総合力向上にも繋げられました。台湾のお客様からは、開発段階での採用件数も順調に伸び、フジミ台湾は、設立からわずか3年で黒字化を達成し、現在はフジミグループ全体の売上、利益を牽引する主要拠点の一つにまで成長することができたのです。

プロジェクトを通して身につけた
「全体最適化の視点」と「顧客対応力」

フジミ台湾の黒字化を達成した後、私は日本に戻り、現在所属するCMP開発課に配属されました。現在は開発リーダーとして、約10名のメンバーが活動する開発グループをまとめる役割を担っています。開発全体の進捗管理や、メンバーのサポート、また、台湾や中国、韓国、アメリカ、ヨーロッパのお客様との開発における窓口役も務めています。

フジミ台湾の立ち上げブロジェクトで得た経験から、現在の仕事で役立っていると感じることが、大きく二つあります。一つ目は、組織そのものの立ち上げ経験です。人材採用や仕事の仕組みづくりに対し、ゼロから試行錯誤した経験から、会社や部門の一部ではなく、全体を見通す視点を学び、全体の最適化を常に考えるようになりました。二つ目は、世界トップシェアを持つ世界最大手の半導体製造ファウンドリであるお客様と直接ビジネス上でのやり取りをした経験です。交渉や会合の場を数多く経験したことで、お客様への対応力が高まりました。これは、海外のお客様との交渉や関係づくりの際に大いに活かされています。

これからも、CMPスラリーの開発を通して、お客様の技術開発力の向上に貢献し、CMPスラリーの分野で世界シェアトップを目指して、挑戦を続けていきたいです。